143回目の創立記念日に寄せて(10月22日)
10月22日は本校の、そして本学園の、創立記念日である。
1883(明治16)年の同日、本校は、当時の麹町区五番町十三番地——現在の千代田区一番町『全国町村議員会館』が建っているあたり――に設立された。
開化以来、英仏米から多くを学ぼうとしてきた潮流に対して、「欧米の学術は盡く我邦の実用に合すべからず。」/「今日教育上の急務は、我邦に適する学術を選び、もって我国の学風を養成するにあり。」(開校式における獨逸学協会会長・北白川宮能久親王殿下御令旨、明治16年10月26日「東京日日新聞」所載)との認識の下、当時の日本と同じく英仏米に遅れて近代化を果たしながら、急速に国力をつけていたドイツに学ぶことこそ我が国に急務と考えた当時の長州閥山県有朋系の実力者たちが組織した獨逸学協会の事業の一つとして設立されたのが、本校の前身である獨逸学協会学校であった。
初代校長・西周先生は、その開校式で行った演説の終わりを、次のように結んでいる。
「学生諸君先ず志を立てて学業に勉強し、加うるに事毎に注意を加えて放心惰慢(*1)に失する無く、はたしてこの三つの者を服贋(*2)し失うこと無くば、すなわち他日六年の業おわるに臨んで、すなわち本日、此開校の美果累々(*3)として樹を連らね、枝を折るを見んとす。これすなわち学生諸君に翼望(*4)するところなり。」(明治16年10月26日「東京日日新聞」所載)
(*1)放心惰慢(ほうしんだまん)……心を奪われてぼんやりすること(放心)と、怠けてだらけること(惰慢)。
(*2)服贋(ふくがん)……心に深く刻みつけて、忘れないようにすること。
(*3)美果累々(びかるいるい) ……美しい果実がたくさん実っている様子。成果が豊かに現れることの比喩。
(*4)翼望(よくぼう)……強く期待し、願うこと(「切望」と同じ意味)。
【現代語訳】
学生の皆さん、まずは志を高く立てて学問にしっかりと励んでください。加えて、すべての物事に対して注意を払い、心を上の空にしたり怠けたりしないようにしてください。もし本当にこの3つのこと(志を立てること・学業に励むこと・注意深く怠けないこと)をしっかり心に刻んで忘れずに実践したならば、将来、6年間の学業を終える時には、まさに今日この開校の日に見るような素晴らしい成果が鈴なりに実り、枝をたわませるほどの(大きな実りとなって実を結ぶ)様子を目にすることになるでしょう。これこそが、私が学生の皆さんに心から期待し、望んでいることです。
西先生がおっしゃるように、この三つのこと――志を立てること、学業に励むこと、注意深く怠けないこと――を実践することができれば、大きな成果を得ることができるに違いない。これは学生生徒に限った話ではないだろう。
143回目の創立記念日を迎えるに当たり、この言葉をいま本校で学ぶ生徒たちに贈るとともに、自らへの戒めとして心に刻みたいと思う。
なお、本校開学時の所在地が、現在の『全国町村議員会館』が建っているあたりであることを突き止められたのは、昭和42年卒の歯科医師獨協会会長・池松武直先生であった。ここに特に記して、感謝の意を表しておきたい。